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2012年10月 4日アーカイブ

見あげる空

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10月の個展を間近にして。

展覧会があると、いつもどこかそわそわするというか
何よりもまず制作、という気持ちになります。
そのせいで、私はいつも、
身のままにゆったりと季節を味わうことが出来なくなることもあります。

こんなに微妙に移りゆく季節の味をその身に含みもせずに
目の前の仕事にすぐに、身も心も精一杯になってしまうとは、
とても、愚かだなあと思います。
でもせっかく、表現する場を得たのだから、全力でやろうと思うのも当然です。
挑戦者だからこそ、がむしゃらにならざるを得ない求道の途、
人が安らいでいるときに頑張らなくてはいけないし、
今の自分を超えて、もっとよい作品を作ることに未来の自分の意味がある、
一生懸命であるのは当然、精一杯が当たり前、でもあります。


だけど、今回だけは、
展覧会が近づいても、私はただ、空を見てしまうことがあります。

見あげると、昨日と違う空。昨日と違う空気の香りがする。
懐かしい香りがする。いつの間にか通り過ぎる雲のかげ。
風の温度。遠くで鳴く鳥の声。
空に誘われる思い。空をさすらう気持ち。


空が美しいなあと、ただそれだけのことで、水がひたひたと満ちるように
こころが満たされてゆくなんて、
私にとっては、子供のとき以来ではないかと
そう思うと、嬉しいような。どこか悔しいような。
なんだか泣けてくるような。

ほんとうはずっと、こんなふうに感じて、満ちて、生きて来れたら良かったのに。
子供のときに十全に満ちた思いも、月の満ち欠けのように、
人生の中で影を落としてゆく。
絵を描いていても、描いていなくても。私が誰であっても。

走ることをやめてしまった機関車のように
動かない私の冷たい体にも、空の色が映る。
いま、画面に向かっても、以前の自分とはどこか違う。
時に、心がひりひりしているときは、
影の冷たさの中で光の温みを求めてうずくような。


個展に出す作品の「流転」などには、
そうした今の状態がよく出ているようです。


よく、個展に来てくださる方のことを考えています。
楽しんでもらえたらなあと思う。心から思います。
その方にとって貴重な時間と、多分電車賃とか、貴重なお金と、
いろいろを費やして、わざわざ私の絵を見に来てくださる、
そうした方々に、私はいったい何を出せるだろうと思う
たとえ何も差し出すことができなくても、
からっぽでも、空のように、
どこまでも自然のままに、嘘も飾りもなくありたいと思います。















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